二段階治療
ヒトの歯列は、乳歯列(期)→混合歯列(期)→永久歯列(期)
と成長します。
乳歯列期に不正咬合があったとしても、この時期は治療せず、観察します。
乳歯列に隙間がないからといって、歯列拡大など早期に治療する必要はありません。
混合歯列期は、生え変わりの時期に相当します。
子どもの矯正治療はこの時期から始めます。
永久歯列になり、凸凹の程度によっては必要に応じ、本格矯正を始めます。
矯正治療は成長発育を考慮するため、治療時期を分けて行う場合があります。
今回は、
ある一人の治療例を参考にして二段階治療(二期治療)について説明します。
本症例は3歳の時に、反対咬合を気にして矯正相談に来られました。
(写真が無いのが残念です)
乳歯列の反対咬合ではありましたが、この時期の治療は必要性ありません。
前歯部の生え変わりのときに受診するよう指示しました。
5年後、
前歯の生え変わりに際し、凸凹を気にして再相談しました。
検査・診断を経て、治療方針をたてます。
第一段階:①上顎前歯の配列による機能的障害の除去
②反対咬合の改善
観 察:永久歯交換の誘導
第二段階:機能的咬合の確立
保 定:観察
【第一段階】
小学2年生 8歳 女子
混合歯列期の前半です。
凸凹や隙間がありますが、現時点で重要なのはそこではありません。
優先順位は反対咬合を治すことです。
反対咬合を放置する危険性についての説明は、ここでは省きます(過去記事参照)。
6カ月の写真
反対咬合は改善されました。
上顎の二番目の歯が斜めのままですが、
反対咬合になっていないのでこの時点では良しとします。
後で治します。
第一段階の目的は達成されました。このあとは観察に移行します。
【観 察】
混合歯列期間は歯の生え変わり、むし歯、顎の成長など定期的に観察します。
永久歯が生えるにしたがって歯列の凸凹がつよくなりますが、想定内です。
【第二段階】
中学1年生 12歳
永久歯列になりました。
この時点で、検査・診断をします。
マルチブラケット治療を始めます。
【保 定】
写真はマルチブラケット治療終了時。動的治療期間は1年7ヶ月。
撮影のため保定装置は外していますが、普段は装着して保定しています。
歯並びの悪いときは、不均衡な状態にあります。
本来の機能は発揮されず、効率が低下しています。
矯正治療では、不均衡を均衡へと修正します。
きれいになっていくに従って機能も上がってきます。
このことは、矯正治療の目的でもあります。
第二段階の方針は、「機能的咬合の確立」でした。
美しいものは機能的であり、機能的なものは美しい。私はそう考えます。
さて、
本症例は二段階治療を必要としましたが、永久歯列に凸凹がない場合、
二段階目の治療をしないことがあります。
過去記事「最小限の介入で、効率の良い治療」がこれに相当します。ご参照ください。