八重歯が可愛かったのは昔のこと
八重歯が可愛いかったのは遠い昔のことで、今は積極的に矯正治療をする時代になりました。見た目が悪いだけでなく、もう一つ重要な問題があります。それは犬歯の働きです。八重歯状態にある犬歯は、ただそこにあるだけで機能していない、働いていません。犬歯の役割を説明するには、かなりの紙面が必要なのでここでは「咬む機能のかなめ」とだけ覚えて下さい。
【初診時口腔内写真】
15歳 女子
上下歯列の凸凹の程度はつよく、犬歯は歯列からはじき出されています。
これでは犬歯は機能できません。
【初診時側貌】
頭部エックス線規格写真 平均値との重ね合わせ 青:平均 赤:本人
診断をするうえで、顔の情報は重要です。重ね合わせ図を見てみましょう。極端なズレはなく、骨格のバランスはとれており、きれいな横顔です。
この、きれいな横顔を崩すことのないように歯を並べる必要があります。
【前歯の位置】
次の図は少し変わっていますが見るべきところは一点だけ、青色の下顎前歯の位置に注目してください。これは日本人の下顎前歯の平均的な位置を示しています。この位置を「基準」と呼んでおきます。
歯の数は通常28本あります。矯正治療をする時、目標もなくこの28本がめったやたらと移動したのでは困ります。そこで下顎前歯の移動目標を決めます。それが「基準」です。下顎前歯が基準に近づくように移動させ、残りの歯は下顎前歯を目安に移動させれば歯列全体としては平均に近ずくという寸法です。
青:平均値 赤:本人
本症例の下顎前歯の位置は、たまたま平均値とほぼ一致してます。下顎前歯の移動目標はここです。言い換えると、今の下顎前歯がここからズレないように全体の凸凹を解消しなければならないと言うことです。本症例の凸凹の程度は著しく、そのまま並べたならば前歯は鳥のくちばしのように前方に傾斜します。およそ美しいと言える状態ではありません。抜歯が必要となります。
【マルチブラケット治療】
犬歯は正しい位置におさまり、きちんと機能するようになりました。きれいな歯並びの完成です。
前歯の傾斜角度が急になることなく、予定した位置に配列しました。
さて、
歯並び・咬み合わせは何故、治さなければならないのでしょうか。
本症例の場合、見た目が悪いのは明白です。本人も気になるし、他人の目にもふれます。次に機能が低下しているという点です。働いていない犬歯があり顎運動の不調、咀嚼効率が低下しています。しかしながら、ほとんどの場合本人は自覚できません。何故ならそれが日常であり、それに慣れてるからです。また比べる対象がありません。
初診と術後
矯正治療によって、審美的かつ機能的な歯並びになりました。犬歯はきちんと働くよう
になり、本人はこの時になって以前の歯並びと比べて機能が上がったことを自覚しま
す。
横顔もきれい、笑顔も自然なものとなり美しい女性になりました。
やはり、歯並び・咬み合わせは治さなくてはいけないのです。