矯正治療のはなし

日本矯正歯科学会認定医 工藤 泰裕

ちょっと反対咬合?、すごい反対咬合?

中学3年生の男子が歯並びを気にして来院されました。


矯正相談は保護者同伴で時間をかけて行います。

 

相談者はこの時点で反対咬合の傾向があるので、私からは顎の成長発育に関する治療を

 

提案しました。もちろん矯正治療をする・しないはご本人の判断なので、療の押し売り

 

はしません。ですから、相談だけで以後連絡のない場合も多々あります。

 

今回も、そのパターンでしたので、特に気にしていませんでした。

 

時が経過して、2年後に再相談に来られました。男子の反対咬合、伸び盛りです。


今、どうなっているのか心配です。


【矯正相談時】

 

中学3年生 写真なし   

 

【マルチブラケット開始時】

 

高校2年生、この症例はちょっと反対咬合なのか、すごい反対咬合なのか。

 

あなたはどちらだと思いますか。

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【頭部エックス線規格写真】

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初診時

 

【プロフィログラム】

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黒:平均値  赤:本人

 

上顎骨は平均的、下顎骨は著しく前下方に位置しています。下顎の過成長による骨格的

 

反対咬合症例です。


 

【マルチブラケット治療終了時】

 

術前の写真と比べてください。

 

左右の写真で、犬歯の関係を見ると改善の程度が分かります。

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本症例は下顎が大きく育ったことによる骨格的反対咬合です。

 

初診時の写真をもう一度見て下さい。

前歯だけ見ると、それ程すごい反対咬合には見えません。ただし、骨格的反対咬合症例

 

では、このような現象があるのです。

 

説明します。

 

①下顎骨が著しく突出してくる

②連動して、下顎前歯は上顎前歯から離れていく。

③このままでは、前歯どうしで咬めない。

④歯の傾斜角度で補償し始める。

⑤上顎前歯の外側傾斜、下顎前歯の内側傾斜

⑥なんとか咬めるようになる。

 

骨格的なずれがある場合、歯の傾斜で補償され見かけ上、前歯は普通に見える、

 

ということです。私はいつも言っています。反対咬合を甘くみてはいけません。

 

反対咬合が怖いのは、全身成長とともに下顎骨が大きく育っていくことです。

 

今回の症例の身長をみてみましょう。

 

相 談:中学3年生の時 168㎝

再相談:高校2年生の時 174㎝

 

6㎝の伸びです。相談時の写真がないのが悔やまれますが当時より下顎骨は成長し、

 

症状は悪化していると思います。ですから適切な時期に適切な治療が必要なのです。

 

正治療単独で治せなくない場合は、大学病院で骨切り術など外科的に治療します。

 

 

工藤歯科・矯正歯科医院