矯正治療のはなし

日本矯正歯科学会認定医 工藤 泰裕

2019-02-01から1ヶ月間の記事一覧

成長期の観察には意味がある

私は大抵の場合、「歯並び・咬み合わせ」と表現しています。 歯並びを治しましょうではなく、歯並び・咬み合わせを治しましょうという具合です。 それは「歯並び」と「咬み合わせ」が独立して存在しているのではなく、共存していると考えるから、この二つを…

八重歯は可愛いか。

テレビなどで活躍する芸能人やアイドルのうち、デビュー当時には八重歯があったの に、いつの間にか八重歯が無くなっている人がいます。あなたは何人、思い出せます か。何故、彼、彼女たちは歯並びを治したのでしょうか。理由は明白です。 綺麗になりたいか…

上の前歯が一本ない場合

ほとんどの患者さんは、歯科医師であればだれでも矯正治療が「出来る」と思っていま す。違います、「出来ません」。説明します。 歯科医師が矯正治療の医療行為を行う事自体は違法ではありません。この点において 「出来る」でしょう。重要なのは「ちゃんと…

唇を閉じることが出来ますか。

上顎前突症例 成人 女性 【初診時側貌】 横顔です。 著しい上顎前突のため、唇が閉じずらいので普段は唇の隙間から前歯が見えています。 唇を閉じる時は、かなり努力して閉じることになるので、顔の皮膚は引っ張られてオトガイ部(下顎の先)にウメボシ状隆…

乳歯の晩期残存

乳歯の下、顎の骨の中にあるはずの永久歯が先天的に存在しない場合、 歯の生え変わりが行われず乳歯が歯列に残ることがあります。 このこと自体、比較的多く見られることで、乳歯が他の永久歯と協力して機能 していれば、特に問題ありません。今回は、乳歯の…

顔が曲がっている。(顎偏位)

顎偏位(がくへんい)。下顎が横にズレて咬んでいる状態、顔もそれに伴って偏位して います。下顎のズレの原因は次のことが考えられます。 ・骨格的な原因として、下顎の骨が変形している場合。 ・機能的な原因として、歯の不良な接触で下顎が誘導される場合…

歯を抜かない矯正治療

矯正治療には二通りあります。 歯を抜く必要のない症例(非抜歯症例)と抜く必要のある症例(抜歯症例)です。前者を「抜かない矯正」として、ことさら強調しセールスポイントにしている場合がありますが、それは「抜かなくてもできる症例」であって、特別な…

八重歯が可愛かったのは昔のこと

八重歯が可愛いかったのは遠い昔のことで、今は積極的に矯正治療をする時代になりました。見た目が悪いだけでなく、もう一つ重要な問題があります。それは犬歯の働きです。八重歯状態にある犬歯は、ただそこにあるだけで機能していない、働いていません。犬…

歯を抜く矯正治療

はじめは、矯正相談です。 自分の口・歯・顎・顔について、それまで分からなかった事が分かるようになれば安心できます。気軽に相談してください。相談の内容は人それぞれです。 ・歯の凸凹が気になる。 ・過剰歯や欠損歯がある。 ・反対咬合、上顎前突、開…

反対咬合の怖い話し

タイトルの「反対咬合の怖い話し」とは何か。実例を紹介します。 今回は反対咬合が改善した後、また反対咬合になった例を取り上げます。怖いですね。 症例は小学1年生、女子 反対咬合を気にして来院されました。 通法に従い、検査・診断をします。 本症例の…

埋伏歯 ①

埋伏歯(まいふくし)と読みます。顎の骨や粘膜下に埋まっていて、生えてこれない歯 のことを言います。タイトルの埋伏歯に番号①を付けました。今後、このシリーズがあ った時の為の整理番号です。 症例 左上犬歯が生えてこないのを気にして来院しました。 …

仕上がりを予測する・先天欠如の場合

歯の先天欠如はそれ程珍しいことではありません。(統計データは他に譲ります) 先天欠如、すなわち歯がないこと自体は問題となりません。問題は歯がないことで隣り 合う歯が傾斜したり、傾斜した結果、咬み合う歯と不良な接触が生じることがあること です。…

子どもの反対咬合

反対咬合の治療時期は、早ければいいというものではありません、 しかし、遅いのも困ります。適切な時期がありますので、矯正歯科認定医に相談してく ださい。ひとつだけ覚えてほしいことがあります。 それは、小学校の高学年になると背が大きくなるのにとも…

責任を果たす。

ブログでは口腔内写真だけの掲載ですが、矯正治療の診断は口の中だけ診て判断するも のではありませんので、誤解のないようにしてください。検査資料は他にもあります が、あえて載せていません。 さて、成人の反対咬合症例です。次に示す写真を見るときは以…

矯正治療をする・しない

QOL(クオリティ・オブ・ライフ)という言葉を再確認してみましょう。 QOLとは、一般に、ひとりひとりの人生の内容の質や社会的にみた生活の質のことを指 し、つまり、ある人がどれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り、人生に幸福を 見出しているか、…