矯正治療のはなし

日本矯正歯科学会認定医 工藤 泰裕

2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

装置は何でもいい、ただし筋は通せ

矯正治療は原因にアプローチすることで、達成されます。 そのためには資料を正確にとること、正しい診断をすることが必要です。 間違った診断は、間違った治療に発展します。 【初診時】 小学1年生 男子 反対咬合は次のタイプに分類されます。 ①歯性の反対咬…

過剰と不足

矯正歯科に従事していると、過剰歯、欠損歯、癒合歯、埋伏歯、形態異常など、 いろいろ経験します。問題は、個々の歯の形や数にとらわれるのではなく、 口腔全体としてどう調和させて、美しく整え、機能するかを考えることです。 今回は、そんなお話しです。…

早過ぎてはいけない、遅過ぎてもいけない

子どもの反対咬合は、適切な時期に適切な治療をしなくてはいけません。 とくに横にズレるタイプは放置することのないようにして下さい。 全ての症例は検査資料を採り、診断をして治療方針をたてます。 今回は、小学3年生 男子 反対咬合症例です。 本症例の治…

ただしい矯正治療

ブログで紹介している症例は全て私が施術しています。 よって、画像には「kudo-ortho.com」の透かし文字を入れています。 さて、本題です。歯列の凸凹は、顎の大きさと歯の大きさとの間でバランスを欠いた時 に発生します。したがって、治療はバランスをとと…

最小限の介入で効率よい治療

歯や顎に機具を付けて、それらを移動させる。矯正治療は人間の体に介入するので、 慎重な対応が必要です。術者は少しだけ手を施して軌道修正する。正常な成長発育にの ったなら、あとは機具を外して、観察する。 私は、最小限の介入で、効率よく治療するのが…

異所萌出

歯が変なところから生えてきました。 上顎の前歯がご覧の状態です。異所萌出と言います。 これも矯正歯科の仕事です。 通法に従い検査資料を採り診断します。 【初診時】 9才 男子 【初診時レントゲン写真】 過剰歯が邪魔になり、歯が方向を変えています。 …

ちょっと反対咬合?、すごい反対咬合?

中学3年生の男子が歯並びを気にして来院されました。 矯正相談は保護者同伴で時間をかけて行います。 相談者はこの時点で反対咬合の傾向があるので、私からは顎の成長発育に関する治療を 提案しました。もちろん矯正治療をする・しないはご本人の判断なので…

不正咬合はなぜ治さなければならないか

不正咬合はなぜ治さなければならないか。 不正咬合は歯・顎・舌・筋肉・呼吸・習癖などのバランスを欠いた時に発生します。 あなたは、あなたの子どもはこの不均衡な状態のままで生活するのでしょうか。 不正咬合があるとQOLは低下します。 QOL(クオリティ…

将来を予測して計画的に治す

はじめは本症例の模型、時期は初診と第一段階後です。 上顎前突症例には、前歯が出ているタイプと前歯がとび出ない代わりに咬み合わせが深くなるタイプの二種類があります。本症例は後者です。両者とも上下顎の歯列が前後的にズレているという点では共通して…

○○矯正とか○○○○○矯正

近頃は、いろんな矯正治療があるようで、何とか矯正とか、ほにゃらら矯正とか。 皆さん、いろいろ工夫を凝らしています。この手の矯正に共通しているのは「ハヤイ、 カンタン」です。私が施術するマルチブラケット治療の治療期間は1年半から2年です。 矯正治…

続・この症例を診断して下さい

前回の「この症例を診断して下さい」とあわせて読むことを勧めます。 そこでは、反対咬合のタイプにはいろいろある事、診断の重要性について説明していま す。今回も、一緒に考えてみましょう。 初診時年齢 7歳 反対咬合です。 【初診時の頭部X線規格写真…

この症例を診断して下さい

私と一緒に、この症例について考えてみましょう。 前回の「みにくいアヒルの子」では上の前歯の隙間について説明しました。 本症例も前歯に隙間があり、同じくアグリーダックリングステージです。 でも、よく見てください。問題点は別にあります、写真を見て…

みにくいアヒルの子

みにくいアヒルの子の時期。アグリーダックリングステージ(Ugly duckling stage) 永久歯の前歯が生える時期のことで、一時的に正中離開が生じて、みにくいけれどその 後に側切歯、犬歯が生えることで隙間は閉鎖され美しくなる。 このことを、童話「みにく…

必要のない矯正治療をする必要はない

矯正歯科業界にも様々な有料の勉強会やセミナーがあります。一般歯科の先生が矯正治療をやってみたいと思えば、そういったところを受講することになるでしょう。数回の講義を受けるだけで修了証が得られるというものです。 セミナーの内容は主催者の自由な考…

簡単な症例などない

たいていの歯科医師は、ワイヤーの曲げ方や装置のことを知りたがります。しかしながら、不正咬合を治すのは針金でもなく装置でもありません。正しい診断が不正咬合を治します。例えばヒトの発生や成長といった基礎的な知識を習得することは診断の精度を上げ…

歯の凸凹は予防できるのか

将来の永久歯の凸凹を予測して、あらかじめ予防出来るものだろうか。 ちまたでは、6才臼歯がやっと生えた程度の低年齢児に対し、拡大装置の使用で 永久歯の凸凹を回避しようとする治療方法があるようです。 わたしはの答えはこうです。「必要のない矯正治療…