矯正治療のはなし

日本矯正歯科学会認定医 工藤 泰裕

2019-01-01から1ヶ月間の記事一覧

木を見て森を見ず

矯正治療をするうえで、歯の凸凹の量が多いか少ないかは重要な問題ではありますが、 凸凹の量だけが、抜歯・非抜歯(ばっし・ひばっし)を決める要因にはなりません。 言い換えれば、凸凹がなくても抜歯するケースがあります。 今回はそんな、おはなしをしま…

歯を抜かずに治療できる例

このブログでは、わたしが治療した症例を紹介しながら矯正歯科の話しをしています。 いままで紹介してきたマルチブラケット治療はたまたま、抜歯症例が続いていました。 抜歯・非抜歯(ばっし・ひばっし)の判定は、術者の好みや、流行りの治療方法で左右 さ…

反対咬合の分類

反対咬合を分類します。 ①、歯の傾斜角度がたまたま反対のタイプ(歯性反対咬合)。 ②、下顎が大きい、上顎が小さいなど骨格に問題のあるタイプ(骨格性反対咬合)。 ③、その他 原因によって治療方法は全く違いうので正しい診断が必要です。検査資料を採った…

アンバランスからバランスへ

抜歯・非抜歯の判断は、先生の好みや流行りの治療で左右される性質のものではありま せん。また抜歯が悪で非抜歯が善ということでもありません。学術的に正しく判定され た結果が優先されます。この結果を無視し、抜歯症例を無理やり非抜歯で治療すること が…

横顔のバランス

抜歯・非抜歯(ばっし・ひばっし)の判定は、基準値と患者さんの検査資料を照らし合 わせて行われます。使用する基準値は、大学などで古くから研究蓄積されてきた日本人 のデータを用います。検査資料のうち、抜歯分析で用いるデータは ①歯の凸凹の量(大小…

あえて、言います

初診時の口腔内写真。キレイな歯並び・咬み合わせです。 この成人女性は何を気にして来院したのでしょうか。 ここで問題です。気になるところはどこでしょうか。 【初診時口腔内写真】 矯正治療には可能性があります。いちど相談を受けても良いと思います。 …

矯正相談

成人女性、前歯が出ていることを気にして来院しました。 当医院では、まず「矯正相談 」を行います。ご本人のお話しを伺い実際の状態をみま す。現在の問題点を抽出し、いくつかの選択肢を提示します。矯正相談だけで治療しな い人もいます。成長期の子供の…

凸凹のタイプも色々

初診時の状態。一見、問題なさそうですが、どうでしょう。写真向かって右上に注目し てください(本人の左上)。上顎の前歯のとなりに、いきなり犬歯があるのがわかりま すか。 【初診時口腔内写真】 この写真の方がわかりやすいですね。 検査資料をもとに診…

スペースの有効利用

上下顎前突(じょうげがくぜんとつ)、聞きなれない言葉ですね。 簡単に言えば、上下の前歯が平均的な角度よりも急傾斜している状態。 横顔の外観は、口元がもっこり突出した感じです。唇が閉じずらいこともあります。 今回の症例は、 その上下顎前突です。 …

治療後のイメージを考える

様々な不正咬合があります。骨格そのものが小さかったり、大きかったり。 歯の凸凹の量が少なかったり、多かったり。 横顔の外観上、口元が出てたり、引っこんでいたり。 咬み合わせが浅かったり、深かったり。 舌癖(ぜつへき)があったり、なかったり。 顔…

乳歯の早期喪失

この症例のどこが悪いのでしょうか。正面の写真では悪いところは見当たりません。 左右の写真です。 歯列の発達過程は次の三つの段階を経ます。乳歯列期→混合歯列期→永久歯列期 本症例は混合歯列期と考えてください。本来、歯のない部分は乳歯が存在していな…

矯正用の小さなゴム

矯正治療をするうえで「歯を抜く」ことがある。というのをご存知でしょうか。 レントゲン分析、模型分析、抜歯分析などのを考慮して抜歯・非抜歯の診断をします。 抜歯・非抜歯の判定で明らかに抜歯、明らかに非抜歯というものと、ボーダーラインに あるもの…

民間療法 その3

今回が、シリーズ最終回です。 あやしい「療法」については、その1でお話ししました。 読んでいない人は過去記事を参照してください。 上顎の前歯の傾斜角度を外側に角度修正し、早期接触を除去します。 (過去記事その2参照) 歯の傾斜を修正すると、下顎…

民間療法 その2

その1の続きです。初めての方は過去記事を参照してください。 矯正歯科医院では、検査資料をきちんと分析します。 原因はどこにあるのか、現在の問題点をあらいだします。 本症例の原因は、上顎の前歯の傾斜角度が内側に傾斜したことで、反対咬合になってい…

民間療法 その1

民間療法とは。古くから民間で見出され伝承されてきた方法によって行う治療法のこと。戦前の昭和期から広く使われるようになった言葉で、通常医療に含まれない「療法」群を指すもので、健康術(体制の容認しない医学システムを用いた健康法で、一つの体系を…

上顎前突症例 その2

治療期間は1年6か月。その間、一か月に一度来院する必要があります。 治療内容によっては二度の方が効率のよいこともあります。 歯を抜くことを「抜歯 ばっし」といいます。 矯正歯科学の分野では「抜歯か非抜歯か」の基準や抜歯分析方法が確立されています…

上顎前突症例 その1

「出っ歯」 本人に面と向かっては言いにくい。 芸能人のなかには、 出っ歯をネタにしている人もいるようですが、 一般人は・・・。 で、治しましょう。 本症例の初診時の口腔内。 頭部エックス線規格写真など他の検査資料から総合的に判断します。 診断の結…