矯正治療のはなし

日本矯正歯科学会認定医 工藤 泰裕

横顔のバランス

抜歯・非抜歯(ばっし・ひばっし)の判定は、基準値と患者さんの検査資料を照らし合

 

わせて行われます。使用する基準値は、大学などで古くから研究蓄積されてきた日本人

 

のデータを用います。検査資料のうち、抜歯分析で用いるデータは

 

①歯の凸凹の量(大小)

 

②歯列の湾曲の程度

 

③横顔に対する前歯の位置(下顎前歯)

 

などです。このうち③について、説明を加えます。あなたの家族や友人の横顔をそーと

 

覗いて見てください、口元はどんな感じですか。

 

もっこり出た感じ」「ひっこんだ感じ」「スッキリした感じ」「出た」に対しては、

 

現在の前歯の位置を後ろに移動させます。このことにより、唇も連動して後退するので

 

口元がスッキリします。横顔のバランスがととのい、美しい顔が出来上がります。

 

【初診時口腔内写真】

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今回の症例は、

 

①歯の凸凹の量→大

③横顔に対する歯の位置→出た感じでした。

 

診断の結果、第一小臼歯の抜歯が必要と判定、マルチブラッケト治療を開始しました。

 

もし、この症例を非抜歯で行うとします(事実上不可能ですが)。どうしたら並ぶか、

 

一緒に頭の中でシミュレーションしてみましょう。

 

まず、上顎の歯列を横に広げるでしょう。

 

犬歯、小臼歯、大臼歯は頬っぺた側に傾斜していきます。相対する下の歯と、かけ離れ

 

ていきます。今度は、下顎の歯列も横に広げることになります。上顎と同じように頬っ

 

ぺた側に傾斜していきます。さらに上下の前歯のかさなりを解消させるためには、

 

唇側におおきく傾斜させざるを得ないでしょう。

 

繰り返しますが、この症例は「口元出た感じ」です。歯が並んだときは、全ての歯は外

 

側に大きく傾斜しているはずです。前歯は鳥のくちばしの様に傾斜し、口元の出た感じ

 

は、もっと強調されます。横顔のバランスは崩れ、、およそ美しいとは言えません。

 

無理な非抜歯治療は有害でもあります。

 

第一小臼歯の抜歯の抜歯後、マルチブラッケト治療を開始。

 

【動的治療終了時】

 

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写真が示すとおり、美しく、機能的な歯並び・咬み合わせ。顔の写真は載せていません

 

が、口元がスッキリとした美しい顔をつくることが出来ました。

 

正治療とは、アンバランスからバランスへと誘導する治療であると言えます。

 

 

工藤歯科・矯正歯科医院