スペースの有効利用
上下顎前突(じょうげがくぜんとつ)、聞きなれない言葉ですね。
簡単に言えば、上下の前歯が平均的な角度よりも急傾斜している状態。
横顔の外観は、口元がもっこり突出した感じです。唇が閉じずらいこともあります。
今回の症例は、 その上下顎前突です。
顔の写真は載せませんが、口元もっこりで口唇閉鎖(こうしんへいさ)が困難でした。
無理に唇を閉じると、下顎の先(オトガイ)の皮膚が引っ張られてシワができます。
診断の結果、上下の第一小臼歯の抜歯が必要となりました。
抜歯したあとには隙間ができます。
この抜歯スペースを最大限利用し、前歯を後退します。
【初診時口腔内写真】
「スペースを最大限に利用し前歯を後退する」とはどういうことか。
例をあげて解説します。
さあ、今日は運動会です。前歯組と奥歯組の綱引きをはじめます。
①第一小臼歯を抜いた隙間があります、平均8mm。
②その隙間を挟んで前方には前歯組が、後方には奥歯組が陣取ります。
③綱引き開始。よーいドン。
本症例は、「スペースを最大限に利用し前歯を後退したい」のです。奥歯組が動かない
ように頑張って、前歯組を隙間に向かって引き込みたいということです。
奥歯組が前方移動しないような工夫が必要です。それ相応のテクニックがあります。
④奥歯組は工藤先生の応援のおかげで、余計な移動はありませんでした。
⑤抜歯した隙間を有効につかい、前歯組を引き込みました。
⑥かくして奥歯組の勝利となりました。
【動的治療終了時】
マルチブラケット装置を外したところ。
口腔内写真だけではお伝え出来ませんが、前歯の位置は初診時より、後ろにさがりまし
た。横顔の外観上、口元のもっこり感もなくなりました。唇も閉じやすくなり、オトガ
イ部の緊張も解消しました。矯正歯科では単に歯の凸凹を解消するにとどまらず、顔の
外観をも含めて治すことができます。そのためには、正しい診断、抜歯・非抜歯の判
定。歯をコントロールする技術が必要です。矯正歯科認定医にはそれが出来ます。