矯正治療のはなし

日本矯正歯科学会認定医 工藤 泰裕

続・この症例を診断して下さい

前回の「この症例を診断して下さい」とあわせて読むことを勧めます。

 

そこでは、反対咬合のタイプにはいろいろある事、診断の重要性について説明していま

 

す。今回も、一緒に考えてみましょう。

 

初診時年齢 7歳

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反対咬合です。

 

【初診時の頭部X線規格写真】

 セファロ写真とも言う。

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矯正歯科では必ず撮影します。診断の時に見せてもらいましょう。

 

頭部X線規格写真から算出した数値を読むには、訓練が必要なのでここでは省きます。

 

【初診時プロフィログラム】

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青:平均値  赤:本人

 

図は同年齢の平均値と本人の重ね合わせです。

 

診断は検査資料を総合的に判断します。この図だけで診断はしませんが、今日は特別で

 

す。あなたは、本症例をどのタイプの反対咬合と考えますか。

 

以下から一つ選んでください。

 

①歯性の反対咬合:歯の傾斜角度が、たまたま反対。

 

②骨格性の反対咬合:上顎骨・下顎骨、そのものが反対。

 

③機能的な反対咬合:一部の歯の接触を避け、顎を前に出す。

 

④これらが組み合わさったもの

 

 

さて、成長期の反対咬合はどの様に治していくのかを説明します。

 

治療は二段階に分けて行います。

 

第一段階:反対咬合の改善

 

観  察:永久歯の生え変わり、顎の成長の観察

 

第二段階:永久歯の歯並びの改善

 

観  察:治療後の観察

 

反対咬合の治療時期はとても重要で、第一段階は成長期のうちに行います。小学校に入

 

ってから治療時期を決めます。それ以前の低年齢から始める必要はありません。

 

だからといって、小学生高学年まで放置するのはダメです。

 

 

先ほどの答えは ① です。

 

したがって、歯にアプローチする装置で治します。

 

【反対咬合の改善】

 

写真なし

 

当医院の矯正治療症例は一症例ごとにファイリングしています。ただ、本症例の反対咬

 

合の改善時の写真がありませんでした。撮影し忘れたものと思います、そういうことも

 

たまにあります。

 

 

【第二段階開始前】

 

年齢 15歳

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永久歯が生えそろったので第二段階に移行します。

 

この時点で、もう一度検査・診断をします。

 

本症例は非抜歯でマルチブラケット治療開始しました。

 

【第二段階終了時】

 

年齢 16歳

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美しくて、機能的な歯並びの完成です。

 

マルチブラケット装置は外しましたが、普段は保定装置(リテーナー)を装着して

 

保定しています。

 

本症例は歯性の反対咬合でした。反対咬合が怖いのは、歯性の反対咬合であっても、

 

全身成長に連動し下顎が大きくなり、骨格性反対咬合に移行する場合があることで

 

す。女子は小学生高学年頃、男子は中学校の頃です。身長が伸びる時期と一致します。

 

ですから、その時期を迎える前に、矯正歯科認定医に診せておく必要があります。

 

反対咬合をあまく見てはいけません。