矯正治療のはなし

日本矯正歯科学会認定医 工藤 泰裕

最小限の介入で効率よい治療

歯や顎に機具を付けて、それらを移動させる。矯正治療は人間の体に介入するので、

 

慎重な対応が必要です。術者は少しだけ手を施して軌道修正する。正常な成長発育にの

 

ったなら、あとは機具を外して、観察する。

 

私は、最小限の介入で、効率よく治療するのが良いと考えています。

 

 

【初診時】

 

小学校3年生  男子

 

向かって左上2番が反対咬合になっています。

 

この部位で、不良な接触があり歯に負担過重がかかっています。同時に、この部位のひ

 

っかりは、下顎を不用意に前方に誘導する原因になっています。

 

早期に解消する必要があります。

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【第一段階】

 

反対咬合は改善し、歯の負担過重と下顎の前方誘導が解消され、正常な成長発育の軌道

 

に乗りました。

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【永久歯の萌出】

 

高校1年生

 

全ての永久歯が生えました。

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ここまで、特に問題なく経過しました。

 

永久歯の凸凹はなく、下顎の過度な成長もありませんでした。

 

第二段階の治療の必要性はなく観察を終了しました。

 

本症例は、初期に矯正装置を使用して正常な成長発育にのせ、あとは機具を外して観察

 

してきました。装置を使ったのはわずかの期間です。

 

矯正歯科認定医はその症例がもつ特徴を把握しています。もう少し観察してもいいの

 

か、来年には治療した方がいいのか、放置するとどうなるか、治療しなくてもいいのか

 

など予測が出来ます。

 

一方で、無計画に装置を使用させて、結果的に治療効果がないか、あるいは悪くなった

 

という例もあると聞きます。歯科医院選びは慎重にしてください。