矯正治療のはなし

日本矯正歯科学会認定医 工藤 泰裕

乳歯

下顎は拡大してはいけない

次の2枚の写真は同じ症例です。 混合歯列期と永久歯列期に撮影したものです。 (混合歯列:乳歯と永久歯の混合) 前歯の凸凹がどうなったか見比べて下さい。 7才 12才 前歯の凸凹の程度が少なくなりました。 さて、ここで問題です。 私は何をしたでしょうか…

信仰か、治療か

適切な時期に、適切な治療を施すのが矯正歯科のセオリーです。 しかしながら、極端な早期治療や間違った治療が行われているのも事実です。 親として知っておいた方が良いことがあります。 【症例1】 【症例2】 写真は、歯列の凸凹を気にして、矯正相談のた…

早ければいいというものではない

歯列は次の三つの段階を経て成長します。 乳歯列(期)→混合歯列(期)→永久歯列(期)。 不正咬合があったとしても、乳歯列期での治療の必要性は高くありません。混合歯列期まで定期的に観察するだけで良いでしょう。 【初診時】 本症例は混合歯列期の反対…

一本の歯が引き起こす問題

一本だけ反対咬合でも、 この一本の歯がいろいろな問題を引き起こしています。 このことについて、説明します。 まず、通法にしたがって、検査・診断をします。 本症例の治療方針は以下の通りです。 第一段階: 上顎前歯の配列による機能的障害の除去と反対…

過剰と不足

矯正歯科に従事していると、過剰歯、欠損歯、癒合歯、埋伏歯、形態異常など、 いろいろ経験します。問題は、個々の歯の形や数にとらわれるのではなく、 口腔全体としてどう調和させて、美しく整え、機能するかを考えることです。 今回は、そんなお話しです。…

早過ぎてはいけない、遅過ぎてもいけない

子どもの反対咬合は、適切な時期に適切な治療をしなくてはいけません。 とくに横にズレるタイプは放置することのないようにして下さい。 全ての症例は検査資料を採り、診断をして治療方針をたてます。 今回は、小学3年生 男子 反対咬合症例です。 本症例の治…

最小限の介入で効率よい治療

歯や顎に機具を付けて、それらを移動させる。矯正治療は人間の体に介入するので、 慎重な対応が必要です。術者は少しだけ手を施して軌道修正する。正常な成長発育にの ったなら、あとは機具を外して、観察する。 私は、最小限の介入で、効率よく治療するのが…

異所萌出

歯が変なところから生えてきました。 上顎の前歯がご覧の状態です。異所萌出と言います。 これも矯正歯科の仕事です。 通法に従い検査資料を採り診断します。 【初診時】 9才 男子 【初診時レントゲン写真】 過剰歯が邪魔になり、歯が方向を変えています。 …

みにくいアヒルの子

みにくいアヒルの子の時期。アグリーダックリングステージ(Ugly duckling stage) 永久歯の前歯が生える時期のことで、一時的に正中離開が生じて、みにくいけれどその 後に側切歯、犬歯が生えることで隙間は閉鎖され美しくなる。 このことを、童話「みにく…

必要のない矯正治療をする必要はない

矯正歯科業界にも様々な有料の勉強会やセミナーがあります。一般歯科の先生が矯正治療をやってみたいと思えば、そういったところを受講することになるでしょう。数回の講義を受けるだけで修了証が得られるというものです。 セミナーの内容は主催者の自由な考…

乳歯の晩期残存

乳歯の下、顎の骨の中にあるはずの永久歯が先天的に存在しない場合、 歯の生え変わりが行われず乳歯が歯列に残ることがあります。 このこと自体、比較的多く見られることで、乳歯が他の永久歯と協力して機能 していれば、特に問題ありません。今回は、乳歯の…

仕上がりを予測する・先天欠如の場合

歯の先天欠如はそれ程珍しいことではありません。(統計データは他に譲ります) 先天欠如、すなわち歯がないこと自体は問題となりません。問題は歯がないことで隣り 合う歯が傾斜したり、傾斜した結果、咬み合う歯と不良な接触が生じることがあること です。…

乳歯の早期喪失

この症例のどこが悪いのでしょうか。正面の写真では悪いところは見当たりません。 左右の写真です。 歯列の発達過程は次の三つの段階を経ます。乳歯列期→混合歯列期→永久歯列期 本症例は混合歯列期と考えてください。本来、歯のない部分は乳歯が存在していな…