矯正治療のはなし

日本矯正歯科学会認定医 工藤 泰裕

相談

成人 上下顎前突症例

重ね合わせ図は治療効果を検証するうえで、重要な情報を提供してくれます。 例えば、どう治ったか、どう治らなかったか、作用は反作用は、など目で見て分かります。術者の治療技術を如実に反映する鏡とも言えます。 上の重ね合わせ図は今回の症例です。説明…

埋伏歯 ④

シリーズ4回目。 埋伏歯を歯列に誘導するのも、矯正歯科の仕事です。 (まいふくし) 【初診】 中学生 女性 前歯がありません。 骨の中に埋まったままで、生えてこれない状態です。 このままでは、日常生活にいろいろ支障をきたします。 埋伏歯の誘導であっ…

装置と歯並び

私が矯正治療について考えるときは、歯と顎を分けて考えます。 例えば、成人で歯列に凸凹がある症例といっても、以下に示すように上下顎の関係性は様々です。 ①上下顎の前後関係が上顎前突傾向のもの ②上下顎の前後関係が反対咬合傾向のもの ③上下顎の前後関…

下顎は拡大してはいけない

次の2枚の写真は同じ症例です。 混合歯列期と永久歯列期に撮影したものです。 (混合歯列:乳歯と永久歯の混合) 前歯の凸凹がどうなったか見比べて下さい。 7才 12才 前歯の凸凹の程度が少なくなりました。 さて、ここで問題です。 私は何をしたでしょうか…

埋伏歯 ③

最初にレントゲン写真を示します。 パッと見てどこに違和感を感じますか。 そうです。向かって左上の犬歯が引っかかって生えてこれない状態ですね。 (本人の右上) 次に、同じレントゲン写真に番号を付けました。 もう一度質問します。どこに違和感を感じま…

早ければいいというものではない

歯列は次の三つの段階を経て成長します。 乳歯列(期)→混合歯列(期)→永久歯列(期)。 不正咬合があったとしても、乳歯列期での治療の必要性は高くありません。混合歯列期まで定期的に観察するだけで良いでしょう。 【初診時】 本症例は混合歯列期の反対…

顔を治す

さっそくですが、本症例の診断結果を以下に示します。 ①骨格性反対咬合である ②下顎が前に誘導されている ③かつ、左に顎変位していく ④上顎前歯2本の先天欠如 ここに挙げた点について、ていねいに対応していきます。 ただ、ひとつだけ治療を難しくする要素が…

装置は何でもいい、ただし筋は通せ

矯正治療は原因にアプローチすることで、達成されます。 そのためには資料を正確にとること、正しい診断をすることが必要です。 間違った診断は、間違った治療に発展します。 【初診時】 小学1年生 男子 反対咬合は次のタイプに分類されます。 ①歯性の反対咬…

早過ぎてはいけない、遅過ぎてもいけない

子どもの反対咬合は、適切な時期に適切な治療をしなくてはいけません。 とくに横にズレるタイプは放置することのないようにして下さい。 全ての症例は検査資料を採り、診断をして治療方針をたてます。 今回は、小学3年生 男子 反対咬合症例です。 本症例の治…

最小限の介入で効率よい治療

歯や顎に機具を付けて、それらを移動させる。矯正治療は人間の体に介入するので、 慎重な対応が必要です。術者は少しだけ手を施して軌道修正する。正常な成長発育にの ったなら、あとは機具を外して、観察する。 私は、最小限の介入で、効率よく治療するのが…

○○矯正とか○○○○○矯正

近頃は、いろんな矯正治療があるようで、何とか矯正とか、ほにゃらら矯正とか。 皆さん、いろいろ工夫を凝らしています。この手の矯正に共通しているのは「ハヤイ、 カンタン」です。私が施術するマルチブラケット治療の治療期間は1年半から2年です。 矯正治…

この症例を診断して下さい

私と一緒に、この症例について考えてみましょう。 前回の「みにくいアヒルの子」では上の前歯の隙間について説明しました。 本症例も前歯に隙間があり、同じくアグリーダックリングステージです。 でも、よく見てください。問題点は別にあります、写真を見て…