矯正治療のはなし

日本矯正歯科学会認定医 工藤 泰裕

咬み合わせ

成人 上下顎前突症例

重ね合わせ図は治療効果を検証するうえで、重要な情報を提供してくれます。 例えば、どう治ったか、どう治らなかったか、作用は反作用は、など目で見て分かります。術者の治療技術を如実に反映する鏡とも言えます。 上の重ね合わせ図は今回の症例です。説明…

複雑なものは単純にするといい

年齢が上がると歯の移動速度が遅いとか、治療期間が長くかかるとか、 そんなことはありません。とくに矯正治療が難かしくなるわけではありません。 ただ、差し歯やブリッジなどの補綴物(ほてつぶつ)があったり、歯周病になっている場合は、そちらへの対応…

歯科医師選び

歯科医師にもいろんな先生がいます。 私のように矯正治療が得意な人もいれば、そうでない先生もいます。 従って、同じ症例であっても、担当医の考え方ひとつで治療方法が異なることがあります。このことは歯並び・咬み合わせの相談をどこでするかによって、…

大人の矯正治療

ここ最近、当医院では40才以上の女性の矯正相談が増えています。 子育てが少し落ち着いた。 今まで気になってはいたけれど、矯正治療の機会がなかった。 理由は人それぞれでしょうが、ようやく矯正歯科医院にたどり着きました。 矯正相談では現在の状態、治…

埋伏歯 ②

過去記事に埋伏歯①があります、今回は②です。 あなたは、この症例をどう考えますか、一緒に診ていきましょう。 【初診時口腔内写真】 17歳 女子 正面に歯が縦にふたつあります。 過剰歯でしょうか。それと、前歯の形が左右で違います。 向かって右の前歯(本…

一本の歯が引き起こす問題

一本だけ反対咬合でも、 この一本の歯がいろいろな問題を引き起こしています。 このことについて、説明します。 まず、通法にしたがって、検査・診断をします。 本症例の治療方針は以下の通りです。 第一段階: 上顎前歯の配列による機能的障害の除去と反対…

顔を治す

さっそくですが、本症例の診断結果を以下に示します。 ①骨格性反対咬合である ②下顎が前に誘導されている ③かつ、左に顎変位していく ④上顎前歯2本の先天欠如 ここに挙げた点について、ていねいに対応していきます。 ただ、ひとつだけ治療を難しくする要素が…

装置は何でもいい、ただし筋は通せ

矯正治療は原因にアプローチすることで、達成されます。 そのためには資料を正確にとること、正しい診断をすることが必要です。 間違った診断は、間違った治療に発展します。 【初診時】 小学1年生 男子 反対咬合は次のタイプに分類されます。 ①歯性の反対咬…

早過ぎてはいけない、遅過ぎてもいけない

子どもの反対咬合は、適切な時期に適切な治療をしなくてはいけません。 とくに横にズレるタイプは放置することのないようにして下さい。 全ての症例は検査資料を採り、診断をして治療方針をたてます。 今回は、小学3年生 男子 反対咬合症例です。 本症例の治…

最小限の介入で効率よい治療

歯や顎に機具を付けて、それらを移動させる。矯正治療は人間の体に介入するので、 慎重な対応が必要です。術者は少しだけ手を施して軌道修正する。正常な成長発育にの ったなら、あとは機具を外して、観察する。 私は、最小限の介入で、効率よく治療するのが…

将来を予測して計画的に治す

はじめは本症例の模型、時期は初診と第一段階後です。 上顎前突症例には、前歯が出ているタイプと前歯がとび出ない代わりに咬み合わせが深くなるタイプの二種類があります。本症例は後者です。両者とも上下顎の歯列が前後的にズレているという点では共通して…

成長期の観察には意味がある

私は大抵の場合、「歯並び・咬み合わせ」と表現しています。 歯並びを治しましょうではなく、歯並び・咬み合わせを治しましょうという具合です。 それは「歯並び」と「咬み合わせ」が独立して存在しているのではなく、共存していると考えるから、この二つを…

顔が曲がっている。(顎偏位)

顎偏位(がくへんい)。下顎が横にズレて咬んでいる状態、顔もそれに伴って偏位して います。下顎のズレの原因は次のことが考えられます。 ・骨格的な原因として、下顎の骨が変形している場合。 ・機能的な原因として、歯の不良な接触で下顎が誘導される場合…