矯正治療のはなし

日本矯正歯科学会認定医 工藤 泰裕

永久歯

口元を引っ込めたい

矯正治療をする動機は、人によって様々です。 八重歯を治したい。出っ歯だ。凸凹が気になる等いろいろです。 人によっては口元を引っ込めたいといった要望もあります。 【初診時】 17才 女性 それ程、歯列の凸凹はありません。 頭部エックス線規格写真など、…

下顎は拡大してはいけない

次の2枚の写真は同じ症例です。 混合歯列期と永久歯列期に撮影したものです。 (混合歯列:乳歯と永久歯の混合) 前歯の凸凹がどうなったか見比べて下さい。 7才 12才 前歯の凸凹の程度が少なくなりました。 さて、ここで問題です。 私は何をしたでしょうか…

埋伏歯 ③

最初にレントゲン写真を示します。 パッと見てどこに違和感を感じますか。 そうです。向かって左上の犬歯が引っかかって生えてこれない状態ですね。 (本人の右上) 次に、同じレントゲン写真に番号を付けました。 もう一度質問します。どこに違和感を感じま…

大人の矯正治療

ここ最近、当医院では40才以上の女性の矯正相談が増えています。 子育てが少し落ち着いた。 今まで気になってはいたけれど、矯正治療の機会がなかった。 理由は人それぞれでしょうが、ようやく矯正歯科医院にたどり着きました。 矯正相談では現在の状態、治…

早ければいいというものではない

歯列は次の三つの段階を経て成長します。 乳歯列(期)→混合歯列(期)→永久歯列(期)。 不正咬合があったとしても、乳歯列期での治療の必要性は高くありません。混合歯列期まで定期的に観察するだけで良いでしょう。 【初診時】 本症例は混合歯列期の反対…

一本の歯が引き起こす問題

一本だけ反対咬合でも、 この一本の歯がいろいろな問題を引き起こしています。 このことについて、説明します。 まず、通法にしたがって、検査・診断をします。 本症例の治療方針は以下の通りです。 第一段階: 上顎前歯の配列による機能的障害の除去と反対…

過剰と不足

矯正歯科に従事していると、過剰歯、欠損歯、癒合歯、埋伏歯、形態異常など、 いろいろ経験します。問題は、個々の歯の形や数にとらわれるのではなく、 口腔全体としてどう調和させて、美しく整え、機能するかを考えることです。 今回は、そんなお話しです。…

早過ぎてはいけない、遅過ぎてもいけない

子どもの反対咬合は、適切な時期に適切な治療をしなくてはいけません。 とくに横にズレるタイプは放置することのないようにして下さい。 全ての症例は検査資料を採り、診断をして治療方針をたてます。 今回は、小学3年生 男子 反対咬合症例です。 本症例の治…

最小限の介入で効率よい治療

歯や顎に機具を付けて、それらを移動させる。矯正治療は人間の体に介入するので、 慎重な対応が必要です。術者は少しだけ手を施して軌道修正する。正常な成長発育にの ったなら、あとは機具を外して、観察する。 私は、最小限の介入で、効率よく治療するのが…

異所萌出

歯が変なところから生えてきました。 上顎の前歯がご覧の状態です。異所萌出と言います。 これも矯正歯科の仕事です。 通法に従い検査資料を採り診断します。 【初診時】 9才 男子 【初診時レントゲン写真】 過剰歯が邪魔になり、歯が方向を変えています。 …

歯を抜かない矯正治療

矯正治療には二通りあります。 歯を抜く必要のない症例(非抜歯症例)と抜く必要のある症例(抜歯症例)です。前者を「抜かない矯正」として、ことさら強調しセールスポイントにしている場合がありますが、それは「抜かなくてもできる症例」であって、特別な…

仕上がりを予測する・先天欠如の場合

歯の先天欠如はそれ程珍しいことではありません。(統計データは他に譲ります) 先天欠如、すなわち歯がないこと自体は問題となりません。問題は歯がないことで隣り 合う歯が傾斜したり、傾斜した結果、咬み合う歯と不良な接触が生じることがあること です。…

木を見て森を見ず

矯正治療をするうえで、歯の凸凹の量が多いか少ないかは重要な問題ではありますが、 凸凹の量だけが、抜歯・非抜歯(ばっし・ひばっし)を決める要因にはなりません。 言い換えれば、凸凹がなくても抜歯するケースがあります。 今回はそんな、おはなしをしま…