装置は何でもいい、ただし筋は通せ
矯正治療は原因にアプローチすることで、達成されます。
そのためには資料を正確にとること、正しい診断をすることが必要です。
間違った診断は、間違った治療に発展します。
【初診時】
小学1年生 男子
反対咬合は次のタイプに分類されます。
①歯性の反対咬合:歯の傾斜角度が、たまたま反対。
②骨格性の反対咬合:上顎骨・下顎骨、そのものが反対。
③機能的な反対咬合:一部の歯の接触を避け、顎を前に出す。
④上記の合わさったもの。
本症例の診断は上顎前歯の内側傾斜と下顎の機能的前方位による反対咬合症例です。
【反対咬合改善時】
適切な時期に適切な治療を施せば効率よく治ります。
本症例は1か月かかりません、写真は2か月目のものです。
反対咬合は改善しました。
治るように治療しているので治って当たり前ですが、私が伝えしたいのは、なぜ治った
かです。問題点を抽出しそれを解消すれば治ります。
検証しましょう。
【頭部X線規格写真】
初診時と反対咬合改善時
頭部X線規格写真は条件を一定にして撮影します。
術前術後のレントゲン写真を重ね合わせると改善のメカニズムが分かります。
これは、トレーシングペーパーに構造物を写し取って表します。
【重ね合わせ図】
本症例は
「上顎前歯の内側傾斜よって、下顎前歯と上顎前歯だけが衝突する時間帯がある。これを避けるため、無意識に下顎を前に出すため反対咬合になっている」
状態でした。よって、
「上顎前歯を外側傾斜させ、歯の衝突を解消すれば、下顎は前に出ず、本来の位置に復帰して反対咬合が治る」
はずです。
ひとつずつ見てみましょう。
実線:初診時、点線:反対咬合改善時
図は脳頭蓋底での重ね合わせです。
〇1、前頭部:点線は1.0㎜ 前方⇒成長
〇2、上顎骨: 1.0㎜ 前方⇒成長
〇3、下顎骨: 一致 ⇒治療効果
〇4、関節付近: 2.0㎜ 後方⇒治療効果
〇5、横顔の軟組織:下唇部 後方⇒治療効果
もう一度言います。
「上顎前歯を外側傾斜させ、歯の衝突を解消すれば、下顎は前に出ず、本来の位置に復帰して反対咬合が治る」
はずです。〇4に注目して下さい、下顎骨が後方に移動しています。
これは、上顎前歯を外側に傾斜した結果、歯の衝突が解消され、下顎が本来の位置に
復帰したことを表しています。ならば、〇3も後退するのではないかという疑問が残り
ます。成長のない成人の場合は、〇4に連動して〇3も後退しますが、この年齢では
下顎骨自体が成長で大きくなるので、このような現象が起きます。
ここまでの検証によって、本症例の問題点は解消したことが証明されました。
治療は効果的に行われ、目標を達成しました。
私のブログでは、矯正装置の技術的な解説はしていません。
重要なのは装置ではなく診断だと考えているからです。
矯正歯科あるいは矯正治療では考え方に筋が通っているか、辻褄があっているかが重要
です。私の考え方の根っこには、このような背景があります。
だから、ツイッターでは、狭くない顎を拡大するな。拡大するなら、根拠を数値
で示せ。必要のない治療をする必要はない。などとつぶやきます。
正しい知識を知ることは、あなた自身、あなたの子どもを間違った矯正治療から守って
くれます。