矯正治療のはなし

日本矯正歯科学会認定医 工藤 泰裕

成人矯正

反対咬合は放置しないこと

反対咬合症例の怖いところは、下顎骨が今後どれくらい成長するのかが、予測できないことでです。 ほとんどの症例は反対咬合の改善治療のあと、安定した経過をたどりますが、 一部の症例では、想定を超える力強い成長がじりじりと続く場合があります。 いずれ…

矯正の価値は装置ではない、結果です。

これから矯正治療をはじめようと考えている人が、装置に関心をもつことはわかります。目立たないとか、取り外しだとか、魅力的な言葉に惹かれるのが人情です。 その心理をうまく利用して経営戦略する歯科医院があるので、仕方のないことではあります。 しか…

成人 上下顎前突症例

重ね合わせ図は治療効果を検証するうえで、重要な情報を提供してくれます。 例えば、どう治ったか、どう治らなかったか、作用は反作用は、など目で見て分かります。術者の治療技術を如実に反映する鏡とも言えます。 上の重ね合わせ図は今回の症例です。説明…

適切な年齢で適切な治療をすること

矯正治療で大切なことは、考え方に筋が通っているかどうか、ということです。 事の道理、事を行うときの正しい順序が重要視されます。 矯正治療を進める筋道は次の通りです。 ①学術的知識 ②症例の問題点の抽出(検査・診断) ③技術 ④治療効果の判定 このこと…

口元を引っ込めたい

矯正治療をする動機は、人によって様々です。 八重歯を治したい。出っ歯だ。凸凹が気になる等いろいろです。 人によっては口元を引っ込めたいといった要望もあります。 【初診時】 17才 女性 それ程、歯列の凸凹はありません。 頭部エックス線規格写真など、…

装置と歯並び

私が矯正治療について考えるときは、歯と顎を分けて考えます。 例えば、成人で歯列に凸凹がある症例といっても、以下に示すように上下顎の関係性は様々です。 ①上下顎の前後関係が上顎前突傾向のもの ②上下顎の前後関係が反対咬合傾向のもの ③上下顎の前後関…

抜くか抜かないかの話

歯を抜く矯正治療、歯を抜かない矯正治療。 そもそも抜く抜かないはどのようにして決めるのか、説明します。 診断には精確な検査資料が必要です。 例えば、頭部エックス線規格写真(横顔のレントゲン)の撮影時に0. 数ミリでも咬み合わせにずれがあっては、…

複雑なものは単純にするといい

年齢が上がると歯の移動速度が遅いとか、治療期間が長くかかるとか、 そんなことはありません。とくに矯正治療が難かしくなるわけではありません。 ただ、差し歯やブリッジなどの補綴物(ほてつぶつ)があったり、歯周病になっている場合は、そちらへの対応…

矯正治療という名の誤解

成人女性、歯並びを気にして来院されました。 【初診時】 矯正治療の技術を持たない場合、向かって左上の二番目の前歯を抜いて(本人の右)、その両隣の歯を細く削り、連続した差し歯、いわゆるブリッジを入れる方法をとるかもしれません。色・形を統一する…

埋伏歯 ③

最初にレントゲン写真を示します。 パッと見てどこに違和感を感じますか。 そうです。向かって左上の犬歯が引っかかって生えてこれない状態ですね。 (本人の右上) 次に、同じレントゲン写真に番号を付けました。 もう一度質問します。どこに違和感を感じま…

歯科医師選び

歯科医師にもいろんな先生がいます。 私のように矯正治療が得意な人もいれば、そうでない先生もいます。 従って、同じ症例であっても、担当医の考え方ひとつで治療方法が異なることがあります。このことは歯並び・咬み合わせの相談をどこでするかによって、…

大人の矯正治療

ここ最近、当医院では40才以上の女性の矯正相談が増えています。 子育てが少し落ち着いた。 今まで気になってはいたけれど、矯正治療の機会がなかった。 理由は人それぞれでしょうが、ようやく矯正歯科医院にたどり着きました。 矯正相談では現在の状態、治…

安易な歯列拡大・部分矯正・歯を削る方法

不正咬合を治療するときは、歯と顎顔面のバランスを考える必要があります。 例えば、不正咬合の種類によっては、顔つきに特徴がでます。 下顎前突(反対咬合)は下顎前突の顔に、上顎前突(出っ歯)は上顎前突の顔に。 ここまでは何となく想像できると思いま…

埋伏歯 ②

過去記事に埋伏歯①があります、今回は②です。 あなたは、この症例をどう考えますか、一緒に診ていきましょう。 【初診時口腔内写真】 17歳 女子 正面に歯が縦にふたつあります。 過剰歯でしょうか。それと、前歯の形が左右で違います。 向かって右の前歯(本…

大人だから矯正治療

きっかけがなかった。 かといって、もう年だから矯正治療には、なかなか踏み出せない。 いいえ、大人だからこそ矯正治療をして、美しさと健康を手に入れるのです。 今はそんな時代です。 何もしないのも自分、行動するのも自分。決めるのも自分です。 先ず矯…

顔を造る

前回のテーマは「顔を治す」でした。 矯正治療では、歯の凸凹を治すだけではなく顔の外観も変えることができます。 反対咬合は反対咬合の顔、上顎前突は上顎前突の顔をしておりそれぞれの特徴を有して います。また、口元がもっこりした感じの場合、正しい診…